「朝出社したら、オフィスが荒らされていた」――そんな事態に遭遇したら、業務への影響だけでなく、顧客情報の流出や信用失墜など、取り返しのつかない損害を被る可能性があります。事務所荒らしは、決して他人事ではありません。
実際、オフィスや事務所を狙った侵入窃盗は毎年数多く発生しており、被害額は数十万円から数百万円に上ることも珍しくありません。さらに深刻なのは、現金や物品の盗難だけでなく、機密情報の漏洩によるビジネスへの打撃です。
しかし、適切な防犯対策を講じることで、こうした被害を未然に防ぐことができます。この記事では、オフィスが狙われる理由から具体的な侵入手口、そして効果的な防犯対策まで、事務所の安全を守るために必要な知識を分かりやすく解説します。
なぜオフィスが事務所荒らしの標的になるのか?

事務所荒らしの被害を防ぐには、まず「なぜオフィスが狙われるのか」を理解することが重要です。犯罪者がオフィスをターゲットにする理由を知ることで、効果的な対策のポイントが見えてきます。
現金や機密情報など狙われる資産がある
オフィスには、犯罪者にとって魅力的な「資産」が集中しています。
最も分かりやすいのが現金です。小売業や飲食業のオフィスでは、レジ金や売上金が保管されていることがあります。また、金庫には現金だけでなく、印鑑や有価証券、貴金属なども保管されている場合があり、高額な被害につながります。
パソコンやタブレット、スマートフォンなどの電子機器も狙われやすい資産です。これらは換金性が高く、持ち運びも容易なため、盗難の対象になりやすいのです。特に最新型の機器は、中古市場で高値で売れるため、組織的な窃盗団に狙われることもあります。
さらに深刻なのが、機密情報の盗難です。顧客リストや契約書、開発中の製品情報、財務データなどは、競合他社やライバルにとって非常に価値があります。情報が流出すれば、企業の信用失墜や法的責任を問われる事態にもなりかねません。
夜間・休日に無人になりやすい環境
オフィスの大きな特徴は、夜間や休日に完全に無人になることです。これは犯罪者にとって絶好のチャンスとなります。
住宅の場合は、夜間でも人がいることが多く、侵入のリスクが高くなります。しかし、オフィスは定時後や週末には誰もいなくなるため、ゆっくりと犯行に及ぶことができます。特に連休前や年末年始など、長期間無人になるタイミングは最も危険です。
また、無人の時間帯が予測しやすいのも問題です。多くのオフィスは「平日9時〜18時」といった決まった営業時間があり、それ以外は確実に無人になります。下見をすれば、犯行に最適な時間帯を簡単に把握できてしまうのです。
防犯意識の低さや人目の少なさが原因に
オフィスビルや商業施設内のテナントは、住宅に比べて防犯意識が低い傾向があります。
「ビルの入口にセキュリティがあるから大丈夫」「他のテナントもいるから安心」という油断が、被害を招くことがあります。しかし実際には、ビルの共用部分のセキュリティをすり抜けたり、他のテナントを装って侵入したりする手口も存在します。
また、オフィスフロアは夜間になると完全に人気がなくなり、音を立てても気づかれにくい環境になります。住宅街なら不審な物音に近隣住民が気づく可能性がありますが、オフィスビルでは誰も気づかないことが多いのです。
さらに、オフィスの従業員は防犯よりも業務効率を優先しがちで、「少しの間だから」と施錠せずに離席したり、来客確認を怠ったりすることがあります。こうした隙が、犯罪者につけ込まれる原因となります。
事務所荒らしの主な手口と被害内容

事務所荒らしの手口を知ることで、どこに防犯の重点を置くべきかが明確になります。ここでは、実際に多発している侵入方法と、狙われやすいものについて解説します。
ガラス破り・ピッキング・ドア外しなどの侵入手段
事務所荒らしで最も多い侵入経路は、出入口と窓です。
ガラス破りは、窓ガラスを割って侵入する手口で、特に1階や低層階のオフィスで多発します。バールなどでガラスを破壊したり、小さな穴を開けて鍵を開けたりする方法があります。通常のガラスは簡単に破れるため、防犯対策が不十分なオフィスは格好の標的です。
ピッキングは、特殊な工具を使って鍵を不正に開ける手口です。古いタイプの鍵や簡易な錠前は、プロの犯罪者なら数分で開けてしまうこともあります。オフィスビルの共用部分は最新のセキュリティでも、テナントのドア自体が旧式の鍵では意味がありません。
より大胆な手口として、ドアごと破壊して侵入する方法もあります。バールでこじ開けたり、蝶番を外したりして、物理的に入口を突破します。深夜の無人のビルでは、多少の音を立てても気づかれないため、こうした荒っぽい手口も使われます。
セキュリティカードの不正使用や内部犯行
外部からの侵入だけでなく、内部の人間による犯行も見過ごせません。
退職した元従業員が、返却していないセキュリティカードや合鍵を使って侵入するケースがあります。また、現従業員が共犯者に情報を提供したり、自ら犯行に及んだりすることもあります。内部の者なら、金庫の場所や貴重品の保管状況、セキュリティの弱点を熟知しているため、効率的に犯行を実行できます。
清掃業者や設備メンテナンス業者を装って侵入する手口もあります。作業服を着て堂々とビルに入り、オフィス内に侵入して盗みを働くのです。
被害に遭いやすいもの
事務所荒らしでは、特定の物品が集中的に狙われます。
金庫・現金・貴重品
金庫は真っ先に狙われます。小型の金庫なら持ち去られ、後で時間をかけて開けられることもあります。据え置き型でも、バールやドリルで破壊されたり、鍵の暗証番号を推測されたりします。金庫の中には、現金だけでなく、契約印や実印、小切手、貴金属などが入っていることが多く、被害額が大きくなりがちです。
顧客情報・契約書などの機密情報
パソコンやサーバー内のデータ、紙の契約書や顧客リストなども重要なターゲットです。これらの情報は転売されたり、競合他社に売られたりする可能性があります。情報流出は金銭的被害だけでなく、企業の信用を大きく損ない、訴訟問題に発展することもあります。
USBメモリや外付けハードディスクなど、持ち運び可能な記録媒体も狙われやすいアイテムです。
パソコン・スマートフォンなど換金性の高い機器
ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、デジタルカメラなどの電子機器は、換金性が高いため頻繁に盗まれます。これらは軽量で持ち運びやすく、中古市場で簡単に売れるため、犯罪者にとって都合がよいのです。
プリンター、プロジェクター、モニターなどのOA機器も、まとめて持ち去られることがあります。
狙われやすいオフィスの特徴とリスク要因

すべてのオフィスが均等に狙われるわけではありません。特定の条件を満たすオフィスが、事務所荒らしのターゲットになりやすい傾向があります。
夜間や休日に無人になるタイミングが明確
営業時間が決まっており、「平日の○時以降は必ず無人」という予測が立てやすいオフィスは危険です。犯罪者は下見を行い、いつなら安全に侵入できるかを見極めます。
特に、小規模なオフィスや個人事務所は、夜間警備や24時間体制の監視がないことが多く、狙われやすくなります。
外から内部の様子が分かりにくい構造
窓にブラインドやカーテンが常に閉まっていたり、磨りガラスで中が見えなかったりするオフィスは、一見プライバシーが守られているようですが、逆に「何をしても外から見えない」環境でもあります。
また、ビルの裏側や地下にあるテナント、階段や非常口から直接アクセスできる構造のオフィスなども、人目につきにくく危険です。
テナントビルでは複数オフィスを狙われやすい
複数のテナントが入居するビルでは、一度ビル内に侵入すれば、複数のオフィスを次々と狙うことができます。特に、共用廊下に面したドアの防犯性が低い場合、短時間で多くのオフィスが被害に遭うことがあります。
ビル全体のセキュリティに頼りすぎず、各テナントが独自に防犯対策を講じることが重要です。
オフィスで今すぐ取り入れたい防犯対策

ここからは、具体的にどんな対策を取ればよいのか、実践的な方法をご紹介します。オフィスの規模や予算に応じて、できることから始めましょう。
出入口・窓の施錠と防犯性の強化
侵入を物理的に防ぐ最初のステップは、出入口と窓のセキュリティ強化です。
防犯性能の高い鍵・窓ガラスを導入する
オフィスのドアには、ピッキングに強いディンプルキーや電子錠を導入しましょう。古いタイプのシリンダー錠は、すぐに交換することをおすすめします。
窓ガラスは、防犯フィルムを貼るか、防犯ガラスに交換することで、破壊に時間がかかるようになります。1階や低層階の窓には、面格子を取り付けるのも効果的です。「侵入窃盗の防犯対策(補助錠・防犯フィルム・CP部品)」
補助錠を追加することで、万が一メインの鍵が破られても、二重のロックが侵入を防ぎます。
鍵・金庫の管理とアクセス権限の徹底
鍵の管理を厳格にすることも重要です。誰がどの鍵を持っているか、貸し出しと返却の記録を残しましょう。退職者からは必ず鍵やセキュリティカードを回収し、必要に応じて鍵を交換します。
金庫の暗証番号は定期的に変更し、知っている人を最小限にとどめます。暗証番号をメモして貼っておくような行為は厳禁です。
防犯カメラで記録と抑止を両立させる
オフィスの防犯対策において、最も効果的なのが防犯カメラの設置です。
防犯カメラには二つの大きな役割があります。一つは「犯罪抑止効果」、もう一つは「証拠記録」です。カメラが設置されていることが分かれば、多くの犯罪者は侵入を諦めます。万が一被害に遭っても、映像が決定的な証拠となり、犯人の特定や保険金請求に役立ちます。
クラウド保存・遠隔監視の活用
最新の防犯カメラシステムは、録画データをクラウドに保存できるタイプが主流です。これなら、録画機器ごと盗まれてもデータは安全に残ります。
また、スマートフォンやパソコンから、いつでもどこでもリアルタイムで映像を確認できる遠隔監視機能も便利です。休日や夜間でも、異変があればすぐに気づくことができます。
動体検知機能があれば、人の動きを感知した際に自動で通知が届くため、不審な侵入を即座に把握できます。
死角のないカメラ配置が重要
防犯カメラは、出入口、窓、金庫の周辺、執務スペース、廊下など、重要なエリアをすべてカバーできるように配置します。死角があると、そこを狙われる可能性があります。
複数台のカメラを設置することで、オフィス全体を隙間なく監視できます。夜間撮影に対応した赤外線カメラなら、暗闇でも鮮明に記録できます。
防犯カメラの存在を示すステッカーを入口に貼ることで、抑止効果はさらに高まります。
機械警備・警備会社のサービスを活用
より高度なセキュリティを求めるなら、警備会社のサービス利用も検討しましょう。
異常検知時の駆けつけ対応
機械警備システムは、センサーが異常を検知すると、自動的に警備会社に通報し、警備員が現場に駆けつけるサービスです。窓やドアの開閉、室内の動きなどを24時間監視し、不審な動きがあれば即座に対応します。
警備員が駆けつけることで、犯行の継続を阻止できますし、被害を最小限に抑えることができます。
アラームやセンサーで即時対応を図る
侵入検知センサーや窓の開閉センサーを設置し、異常があれば大音量のアラームが鳴る仕組みも有効です。犯人を驚かせて退散させるだけでなく、周囲に異変を知らせる効果もあります。
セキュリティシステムと防犯カメラを連動させれば、アラームが作動した瞬間から録画を開始するなど、より高度な防犯体制を構築できます。
情報漏洩や内部犯行への備えも重要

外部からの侵入だけでなく、内部の脅威にも目を向ける必要があります。
社員教育と防犯マニュアルの整備
従業員一人ひとりの防犯意識を高めることが、オフィス全体のセキュリティ向上につながります。
退社時の施錠確認、来客対応の手順、不審者を見かけた際の通報方法などを、マニュアル化して共有しましょう。定期的に防犯研修を実施し、最新の手口や対策を学ぶ機会を設けることも効果的です。
「少しの間だから」と無施錠で離席しない、見知らぬ人がオフィス内にいたら声をかける、といった基本的なルールを徹底することが大切です。
退職者のアクセス権・暗証番号を見直す
従業員が退職した際は、必ずセキュリティカード、合鍵、IDカードなどを回収します。電子錠の暗証番号やパスワードも速やかに変更しましょう。
アクセス権限は定期的に見直し、不要になった権限は削除します。「いつか使うかも」と放置すると、セキュリティホールになります。
情報セキュリティと物理セキュリティの連携
パソコンやサーバーへのアクセス制限、データの暗号化、バックアップの実施など、ITセキュリティも並行して強化しましょう。
重要書類は施錠できるキャビネットに保管し、使用後はシュレッダーで処分します。物理的な防犯と情報セキュリティを連携させることで、総合的な保護が実現します。
被害に遭ったときの対応手順

万が一、事務所荒らしの被害に遭ってしまった場合、迅速かつ適切な対応が被害の拡大を防ぎます。
警察への通報と被害届の提出
被害に気づいたら、すぐに110番通報しましょう。「110番通報の基準と伝える内容(警視庁)」現場にはできるだけ手を触れず、証拠を保全します。
警察が到着したら、被害状況を詳しく説明し、盗まれたものや壊されたものをリストアップします。防犯カメラの映像があれば、提供しましょう。
被害届を提出することで、捜査が開始され、保険金請求の際にも必要な書類となります。
保険・管理会社などへの連絡
オフィスの保険に加入している場合、速やかに保険会社に連絡します。被害状況の写真撮影、被害品のリスト作成、警察の被害届受理番号などが必要になります。
テナントの場合は、ビルの管理会社にも報告し、共用部分のセキュリティ見直しを依頼します。
証拠の記録と再発防止のための点検
被害状況を詳細に記録し、写真や動画で残しておきます。防犯カメラの映像は必ず保存しましょう。
被害後は、なぜ侵入を許してしまったのか、セキュリティの弱点を分析します。鍵の交換、防犯設備の追加、セキュリティ体制の見直しなど、再発防止策を速やかに実施することが重要です。
まとめ

オフィスの事務所荒らし被害は、金銭的な損失だけでなく、機密情報の漏洩や事業の継続にも深刻な影響を及ぼします。しかし、適切な防犯対策を講じることで、リスクを大幅に減らすことができます。
基本的な対策としては、防犯性能の高い鍵への交換、窓の強化、金庫やアクセス権限の厳格な管理などがあります。さらに、従業員の防犯意識を高め、退職者の鍵回収や暗証番号変更を徹底することも重要です。
しかし、これらの対策の中でも、防犯カメラの設置は非常に効果的です。防犯カメラは24時間365日オフィスを監視し、侵入者を記録するだけでなく、その存在自体が強力な犯罪抑止力となります。クラウド保存や遠隔監視機能があれば、いつでもどこでもオフィスの状況を確認でき、異常があれば即座に対応できます。
特に、出入口や窓、金庫周辺など重要エリアを死角なくカバーする配置が重要です。防犯カメラと機械警備を組み合わせれば、さらに高度なセキュリティ体制が構築できます。
大切な事業を守るために、できることから防犯対策を始めましょう。そして本格的な保護を考えるなら、防犯カメラの導入を最優先に検討してください。確実な記録と強力な抑止力が、あなたのオフィスと事業の安全を守る最善の方法となるはずです。
