士業事務所や小規模オフィス、店舗など、さまざまな事業所では日々多くの人が出入りします。しかし、その中に不審者が紛れ込んでも、なかなか見分けがつかないケースも少なくありません。特に従業員が少ない小規模な事業所では、受付体制が手薄になりがちで、侵入や窃盗、さらには顧客情報の漏洩といったリスクに直面する可能性があります。万が一トラブルが発生すれば、金銭的な損失だけでなく、顧客や取引先からの信頼を失う事態にもつながりかねません。本記事では、事業所における不審者対策の基本的な考え方から、人的対策と設備対策の具体的な方法、実際の対策例まで、わかりやすく解説します。これから対策を始めたい事業所の方も、既存の体制を見直したい方も、ぜひ参考にしてください。
なぜ事業所に不審者対策が必要なのか?

事業所には、パソコンや現金、顧客情報など、価値のある資産が集中しています。また、不特定多数の人が出入りする環境であるため、不審者が紛れ込みやすく、トラブルのリスクが常に存在します。ここでは、事業所が狙われやすい理由や想定されるリスク、そして日常的な備えの重要性について解説します。
士業事務所や小規模オフィスが狙われやすい理由
弁護士事務所、税理士事務所、行政書士事務所などの士業事務所は、顧客の重要な個人情報や企業の機密情報を扱っているため、犯罪者にとって魅力的なターゲットです。また、小規模オフィスは従業員数が少なく、受付に常時スタッフを配置できないケースも多いため、来訪者のチェックが甘くなりがちです。さらに、一般的なオフィスビルと異なり、独立した建物や雑居ビルの一室にあることも多く、人の目が届きにくい環境にあります。こうした構造的な特徴が、不審者の侵入を容易にしています。
侵入・窃盗・情報漏洩など多様なリスク
事業所が直面するリスクは、単なる窃盗だけではありません。現金やパソコン、備品の盗難はもちろん、顧客の個人情報や企業の機密データが入ったUSBメモリやハードディスクが持ち出されるケースも増えています。情報漏洩は、金銭的な被害以上に企業の信用を大きく損ない、法的責任を問われる可能性もあります。また、元顧客や元従業員によるトラブル、クレーマーの侵入、さらには暴力行為に発展するケースもあり、従業員の身体的安全も脅かされます。こうした多様なリスクに対して、総合的な対策が求められています。
被害を未然に防ぐには日常の備えが重要
不審者対策において最も重要なのは、被害に遭ってから対処するのではなく、未然に防ぐための備えを日常的に行うことです。施錠の徹底や来訪者の確認といった基本的な行動を習慣化することで、多くのトラブルを防ぐことができます。また、防犯カメラや警報システムなどの設備を導入することで、不審者に「ここは警戒されている」と認識させ、侵入を思いとどまらせる抑止効果も期待できます。「店舗・会社等の侵入盗対策(防犯カメラ・警報装置)」日々の小さな積み重ねが、大きなトラブルを防ぐ鍵となります。
不審者対策の基本は「人的対策」と「設備対策」の両立

効果的な不審者対策を実現するには、従業員の意識と行動による「人的対策」と、防犯設備による「設備対策」の両方をバランスよく組み合わせることが重要です。「事務所荒しの防犯対策(千葉県警)」ここでは、人的対策の具体的な方法について詳しく解説します。
来所者管理と受付での確認を徹底する
受付は事業所の最前線であり、不審者の侵入を防ぐ第一の砦です。来訪者に対して適切な確認を行うことで、関係者以外の立ち入りを効果的に防げます。ここでは、受付での具体的な管理方法について見ていきましょう。
記名・身分証確認・アポイント制の導入
来訪者には必ず記名してもらい、訪問先と用件を確認する習慣をつけましょう。受付簿に氏名、会社名、訪問先、入退館時刻を記録することで、後から確認が必要になった際にも役立ちます。重要な情報を扱う事業所では、身分証明書の提示を求めることも検討すべきです。また、原則としてアポイントなしの来訪は受け付けない体制にすることで、不審者の侵入リスクを大幅に減らせます。急な来訪者には、担当者に連絡して許可を得てから案内するルールを徹底しましょう。
応対マニュアルを明文化して共有
受付対応のルールを口頭で伝えるだけでは、担当者によって対応にばらつきが生じます。誰が対応しても同じレベルのセキュリティを保つために、応対マニュアルを文書化しましょう。マニュアルには、来訪者への質問項目、確認すべき事項、不審な点があった場合の対応手順、緊急時の連絡先などを明記します。また、定期的に従業員全員でマニュアルの内容を確認し、実際にロールプレイング形式で訓練を行うことで、いざという時にも落ち着いて対応できるようになります。
巡回や目視によるチェック体制を整える
受付だけでなく、事業所内の各エリアでも不審者に気づける体制を整えることが重要です。従業員全員が防犯意識を持ち、組織的にチェックできる仕組みを作りましょう。
従業員全体で不審者に気づく意識を持つ
不審者対策は、特定の担当者だけの仕事ではありません。従業員全員が「見知らぬ人がいたら声をかける」「不審な行動を見かけたら報告する」という意識を持つことが大切です。廊下やトイレ、給湯室など、誰でも立ち入れる場所で見慣れない人物を見かけたら、「どちらへご用ですか?」と声をかける習慣をつけましょう。この一声が、不審者に「監視されている」と感じさせ、犯行を諦めさせる効果があります。また、従業員同士で情報を共有し、「今日は○○社の方が来ています」といった連絡を徹底することも有効です。
防犯マニュアルと役割分担の策定
不審者を発見した際、誰が何をするのかを事前に決めておくことで、冷静かつ迅速な対応が可能になります。防犯マニュアルには、不審者発見時の連絡フロー、警察への通報手順、従業員の避難経路、緊急連絡先などを明記しましょう。また、緊急時のリーダー役、警察への通報担当、他の従業員への連絡担当など、役割分担を明確にしておくことも重要です。定期的に防犯訓練を実施し、マニュアル通りに動けるか確認することで、実際のトラブル時にも慌てず対応できます。
警察・自治体との連携を強化する
事業所単独での対策には限界があります。地域の警察や自治体と日頃から連携を取ることで、より効果的な防犯体制を構築できます。
地域の不審者情報を共有・相談できる関係構築
所轄の警察署や交番と顔の見える関係を築いておくことは、非常に重要です。地域で不審者の目撃情報があった場合、警察から事業所に情報提供してもらえるよう、日頃から連絡を取り合いましょう。また、防犯設備の導入や防犯体制について相談すれば、専門的なアドバイスを受けられます。自治体が主催する防犯講習会や地域の防犯協議会に参加することで、近隣の事業所とも情報交換ができ、地域全体の防犯力向上につながります。何か不審な動きがあれば、すぐに警察に相談できる関係を作っておきましょう。
設備でできる実践的な不審者対策

人的対策に加えて、防犯設備を導入することで、さらに高いレベルのセキュリティを実現できます。ここでは、事業所におすすめの具体的な防犯設備とその効果的な活用方法を解説します。
防犯カメラ・監視カメラの設置と活用
防犯カメラは、不審者対策の中心となる設備です。侵入者への心理的な抑止効果が高く、万が一の際には決定的な証拠となります。適切に設置・運用することで、事業所の安全性を大幅に向上させることができます。
死角のない配置とクラウド録画で安心を確保
防犯カメラを設置する際は、出入口、受付、駐車場、廊下など、人の動線をカバーする位置に配置しましょう。特に、死角になりやすい非常階段や建物の裏側、トイレ付近なども重点的に監視することが重要です。最近では、録画データをクラウド上に保存できるシステムが普及しており、録画機器の故障や盗難によるデータ損失のリスクを回避できます。また、スマートフォンやパソコンから遠隔で映像を確認できる機能により、夜間や休日でも事業所の様子をリアルタイムでチェックできます。
機械警備・警報システムの導入
夜間や休日など無人時間帯の防犯には、機械警備や警報システムが非常に有効です。侵入を自動検知して即座に対応できる体制を整えましょう。
緊急通報・自動検知で即時対応が可能に
機械警備システムは、ドアや窓に設置したセンサーが異常を検知すると、自動的に警備会社に通報し、警報音を鳴らして侵入者を威嚇します。警備会社のスタッフが現場に駆けつけて状況を確認し、必要に応じて警察に通報してくれるため、無人時間帯でも安心です。また、最新のシステムでは、AI技術により人の動きを検知して管理者のスマートフォンにアラートを送る機能もあります。これにより、不審な動きがあった際に即座に映像を確認し、迅速な判断ができます。導入コストは発生しますが、長期的な安心を考えれば価値のある投資です。
敷地境界・出入口のセキュリティ強化
建物の内部だけでなく、外周部分のセキュリティも重要です。不審者が敷地内に侵入しにくい環境を作ることで、トラブルを未然に防げます。
外周・駐車場・受付などへの防犯対策
敷地の境界には、フェンスや柵を設置して不正な侵入を防ぎましょう。また、夜間は外灯や人感センサーライトで建物周辺を明るく保つことで、侵入者が近づきにくくなります。駐車場には防犯カメラを設置し、車両のナンバープレートや運転者の顔を記録できるようにしましょう。受付エリアには、来訪者と従業員を明確に区別できるよう、パーテーションやカウンターを設けることも有効です。出入口は必要最小限に絞り、使用しない出入口は施錠を徹底します。こうした物理的な対策により、不審者の侵入を効果的に防げます。
トラブルを未然に防いだ対策例

実際に不審者対策を実施した事業所では、どのような効果があったのでしょうか。ここでは、具体的な対策例とその成果を紹介します。これらの事例が、皆さんの事業所での対策を考える際の参考になれば幸いです。
来所管理の徹底で不審者の侵入を防止した例
ある税理士事務所では、以前はアポイントなしの来訪者でも受け入れていましたが、不審な人物が何度か事務所内をうろついていたことから、来所管理を徹底することにしました。具体的には、来訪者には必ず事前予約を求め、受付で氏名と訪問先を確認し、記名簿に記録するルールを設けました。また、身分証明書の提示を依頼し、担当者が迎えに来るまで受付で待機してもらう体制にしました。この対策により、関係者以外の立ち入りがなくなり、従業員も安心して業務に集中できるようになりました。顧客からも「セキュリティがしっかりしている」と好評を得ています。
カメラ設置によって夜間の不審者が発覚した例
小規模な事務所を運営する企業では、何度か夜間に建物周辺で不審な人物が目撃されていました。そこで、出入口と駐車場に防犯カメラを設置し、24時間録画する体制を整えました。ある夜、カメラの映像を確認したところ、深夜に建物の裏口を物色する不審者が映っていました。すぐに警察に通報し、映像を提供したところ、近隣で連続窃盗を繰り返していた人物として逮捕されました。この事例により、防犯カメラが犯罪の抑止だけでなく、証拠確保と犯人検挙にも大きく貢献することが実証されました。
マニュアル整備と訓練により通報対応が迅速化した例
ある士業事務所では、かつて不審者が侵入した際、誰が警察に通報すべきか混乱し、対応が遅れた経験がありました。この反省から、防犯マニュアルを作成し、不審者発見時の役割分担を明確にしました。具体的には、発見者は大声で周囲に知らせる、リーダー役が状況を確認し判断する、通報担当が警察に連絡する、他の従業員は安全な場所に避難するといった手順を定めました。また、年に2回の防犯訓練を実施し、実際にマニュアル通りに動けるか確認しています。この取り組みにより、従業員の防犯意識が高まり、万が一の際にも冷静に対応できる体制が整いました。
防犯強化で信頼される事業所づくりを

不審者対策をしっかりと行うことは、単にトラブルを防ぐだけでなく、事業所全体の信頼性や業務効率の向上にもつながります。ここでは、防犯強化がもたらすさまざまなメリットについて解説します。
従業員の安心感が業務効率と対応力を高める
防犯対策が整っている職場では、従業員が安心して働けるため、業務への集中力が高まります。「いつ不審者が来るかわからない」という不安を抱えながら仕事をするのと、「しっかりとした防犯体制がある」という安心感の中で働くのとでは、パフォーマンスに大きな差が生まれます。また、万が一トラブルが発生した際にも、マニュアルや訓練により冷静に対応できる力が身についています。従業員の安心感は、離職率の低下や職場の雰囲気向上にもつながり、結果的に事業所全体の生産性向上に貢献します。
顧客・来訪者からの印象アップにもつながる
防犯カメラや受付での確認体制がしっかりしている事業所は、訪れる顧客や取引先に「この会社は情報管理がしっかりしている」という印象を与えます。特に、個人情報や機密情報を扱う士業事務所や金融関係の事業所では、セキュリティ体制が顧客の信頼に直結します。「ここなら安心して大切な情報を預けられる」と感じてもらえることは、顧客満足度の向上やリピート率アップにつながります。また、来訪者への丁寧な確認は、「しっかりとした会社だ」というプロフェッショナルな印象を与える効果もあります。
防犯意識の継続と定期見直しが成功のカギ
防犯対策は一度整えれば終わりではなく、継続的な意識維持と定期的な見直しが重要です。時間が経つと、施錠確認が形骸化したり、マニュアルが実態と合わなくなったりすることがあります。定期的に防犯訓練を実施し、従業員の意識を新たにすることが大切です。また、半年に一度は防犯設備の点検を行い、カメラの映像が鮮明か、警報装置が正常に作動するかを確認しましょう。近隣で新たな犯罪手口が報告された場合は、すぐに対策を見直すなど、常に最新の状況に対応できる柔軟性を持つことが、長期的な安全確保の鍵となります。
まとめ

事業所における不審者対策は、従業員と顧客の安全を守り、事業の信頼性を高めるために欠かせない取り組みです。特に士業事務所や小規模オフィスは、重要な情報を扱いながらも人手が限られているため、計画的な対策が求められます。
効果的な不審者対策には、来所者管理や従業員の意識向上といった「人的対策」と、防犯カメラや警報システムといった「設備対策」の両立が不可欠です。まずは受付での確認徹底や応対マニュアルの作成から始め、段階的に防犯カメラや機械警備などの設備を導入していきましょう。
実際の対策例からもわかるように、適切な対策を講じることで、不審者の侵入を防ぎ、万が一の際にも迅速に対応できる体制を整えることができます。また、防犯体制の強化は、従業員の安心感や顧客からの信頼向上にもつながる、価値のある投資です。
トラブルが発生してから後悔するのではなく、今日からできる対策を着実に実施し、安全で信頼される事業所づくりを目指しましょう。定期的な見直しと継続的な意識維持を忘れずに、長期的な視点で防犯体制を整えていくことが成功の鍵となります。
