会社の駐車場は、夜間や休日に人目が少なくなるため、犯罪者に狙われやすい場所のひとつです。社用車の盗難やいたずら、車上荒らしといった被害は、業務への支障だけでなく、社員の安全や会社の信頼にも関わる深刻な問題です。
「うちの会社は大丈夫」と思っていても、実際に被害が出てから対策を始めるのでは遅すぎます。この記事では、会社の駐車場で起こりやすい犯罪の実態から、低コストでできる基本対策、設備投資による本格的な防犯強化、さらに日常運用のポイントまで、わかりやすく解説します。防犯対策を見直したい担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
会社の駐車場で起こりやすい犯罪・トラブルとは

会社の駐車場では、いたずらや車上荒らしといった身近なトラブルから、社用車の盗難・部品盗難まで、さまざまな犯罪が発生しています。対策を講じるうえでは、まず「どんな犯罪が・どんな手口で起きているか」を正しく知ることが重要です。ここでは代表的な犯罪の手口と、会社の駐車場が狙われやすい理由を整理します。
いたずら・車上荒らしの手口
車上荒らしとは、駐車中の車の窓ガラスを割り、車内の荷物を盗む犯罪です。ダッシュボードの上や助手席に置かれたカバン・財布・スマートフォンなどが主なターゲットになります。犯人は数十秒〜数分という短時間で作業を終えるため、監視カメラの死角や照明が暗いエリアを好んで狙います。
いたずらの場合は、車体へのキズや落書き、タイヤのパンクなどが代表的です。悪意を持った第三者によるものだけでなく、近隣住民や通行人によるケースも見られます。被害金額が少額でも、修理費の負担や社員の不安感・士気低下といった影響は軽視できません。
社用車盗難・部品盗難の事例
近年増加しているのが、社用車そのものを盗む「車両盗難」と、特定の部品だけを狙う「部品盗難」です。車両盗難では、スマートキーの電波を不正に増幅して解錠・発進する「リレーアタック」と呼ばれる手口が広まっており、対策が追いついていない企業も少なくありません。「リレーアタックとは(警視庁)」
部品盗難で特に被害が多いのが「触媒コンバーター」です。排気ガスを浄化するこの部品には高価な貴金属が含まれており、転売目的で狙われます。「触媒コンバーター盗難(注意喚起)」ハイブリッド車は特にリスクが高いとされています。社用車が複数台集まる法人駐車場では、一晩で複数台が被害に遭うケースもあり、業務への打撃は深刻です。
なぜ会社の駐車場は狙われやすいのか
会社の駐車場が狙われやすい理由は主に3つあります。第一に「夜間・休日に無人になること」、第二に「複数台の車が一か所に集まっており、効率よく犯行が行えること」、第三に「一般住宅と比べて防犯意識や対策が後回しにされがちなこと」です。
広い敷地では照明が行き届かず、死角が生まれやすい点もリスクを高めます。また、毎日同じ場所に同じ車が駐車されるパターンが読まれやすく、下見をされやすいという側面もあります。こうした「狙われやすい条件」を正しく認識することが、効果的な対策の出発点になります。
まずは基本から|低コストでできる駐車場防犯対策

大きな設備投資をしなくても、照明の整備・出入口の管理・社員への意識づけといった基本対策だけで、防犯効果は大きく高まります。まずは費用をかけずに、あるいは低コストで取り組める対策から始めましょう。ここでは「照明」「出入口・境界管理」「社員教育」の3つに分けて解説します。
照明を強化して死角をなくす
駐車場の暗い場所は、犯行を誘発する最大の要因のひとつです。照明を強化して死角をなくすことは、最もコストパフォーマンスの高い防犯対策といえます。LED照明による全体的な明るさの確保と、センサーライトによる補完的な威嚇効果を組み合わせるのが効果的です。
LED照明で明るさを確保する
既存の蛍光灯や水銀灯をLED照明に切り替えることで、駐車場全体を均一に明るく保つことができます。LEDは消費電力が少なく、長寿命なためランニングコストの削減にもつながります。照度の目安は駐車場全体で30ルクス以上が推奨されており、特に建物の裏側・隅・通路の暗いエリアへの追加設置を優先しましょう。明るい環境は犯人に「見られている」という心理的プレッシャーを与えます。
センサーライトを活用する
センサーライトは、人や車の動きを感知して自動で点灯する照明です。突然の点灯が侵入者への強い威嚇になるうえ、常時点灯と比べて電気代を大幅に抑えられます。防犯カメラの設置が難しいエリアや、死角になりやすい場所への補助照明として特に有効です。設置の際は感知範囲と点灯時間の設定を適切に調整し、通行人や動物による誤作動が最小限になるよう調整することが大切です。
出入口・敷地境界の管理を徹底する
出入口や敷地の境界をしっかり管理することで、部外者が気軽に立ち入れない環境をつくれます。物理的な「入りにくさ」を演出することが、犯罪抑止の基本です。ゲート・チェーンによる車両侵入の防止と、フェンス・防犯砂利による徒歩侵入の抑制を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
ゲート・チェーンの設置
夜間や休日など、駐車場を使用しない時間帯にゲートやチェーンで入口を封鎖することは、車両による不審者の侵入を物理的に防ぐ有効な手段です。電動ゲートは初期費用がかかりますが、手動チェーンであれば数千円〜数万円程度で導入できます。重要なのは「施錠・解錠のルールを社内で明確に定め、確実に運用すること」です。担当者を決め、開閉記録をつける習慣をつけましょう。
フェンス・防犯砂利の活用
敷地の境界にフェンスを設置することで、徒歩での侵入を抑制できます。フェンスが難しい場所には、踏むと大きな音が出る「防犯砂利」を敷くだけでも効果があります。防犯砂利は工事不要で自分たちで設置でき、コストも比較的安価です。「侵入しようとすると音がする」という環境をつくることで、犯人に発覚リスクを意識させる心理的抑止効果が働きます。
社員への防犯意識の徹底
どれだけ設備を整えても、使う側の意識が低ければ効果は半減します。社員一人ひとりの日常行動が防犯の最後の砦です。車内への貴重品放置の禁止と、施錠・ロックの徹底を社内ルールとして明文化し、継続的に意識を高める取り組みが必要です。
車内に貴重品を置かないルール化
車上荒らしの多くは、車内に見えている貴重品を狙います。カバン・財布・スマートフォン・カーナビのリモコンなどを車内に置かないことを社内ルールとして定め、全社員に周知しましょう。特にダッシュボードの上や助手席・後部座席は外から見えやすいため要注意です。ポスター掲示や朝礼での声かけなど、繰り返し周知することで習慣化を促しましょう。
施錠・ハンドルロックの徹底
「少しの間だから」という油断が被害を招きます。社用車・私有車を問わず、駐車の際は必ず施錠するよう徹底しましょう。加えて、ハンドルロックや後付けの盗難警報装置を活用することで、万が一の際の被害を最小限に抑えられます。リレーアタック対策としては、スマートキーを電波遮断ポーチ(ファラデーバッグ)に入れて保管するよう社員に推奨することも有効な方法です。
設備投資で強化する|本格的な駐車場防犯対策

基本対策に加えて、防犯カメラ・センサー・警備会社との連携といった本格的な設備・サービスを導入することで、防犯レベルを大幅に高めることができます。初期費用はかかりますが、被害が発生した場合の損失や信頼低下と比較すれば、十分に見合う投資です。ここでは「防犯カメラ」「防犯センサー」「警備会社」の3つを解説します。
防犯カメラの設置と選び方
防犯カメラは、犯罪の抑止力として最も高い効果を発揮する設備のひとつです。「カメラに映っている」という意識が犯行を思いとどまらせる心理的効果は絶大で、万が一被害が発生した際の証拠確保にも役立ちます。近年はリアルタイム監視システムやAIを活用した高機能カメラも普及しており、用途・予算に合わせた選択が可能です。
リアルタイム監視システム
インターネットに接続したIPカメラを導入すれば、スマートフォンやパソコンからいつでもリアルタイムで駐車場の映像を確認できます。担当者が外出中でも異常に気づいてすぐ対処でき、録画データはクラウドに保存されるため、証拠映像が消えるリスクも低減されます。複数台のカメラを一元管理できるシステムを選ぶと、管理負担を大幅に減らせます。
AIカメラシステムの活用
AI(人工知能)を搭載したカメラは、映像を自動解析して不審な行動や車両を検知し、アラートを発信する機能を持ちます。人が常時モニターを見張る必要がなく、検知精度も高いため、大規模な駐車場や夜間無人になる施設に特に有効です。ナンバープレートの自動読み取りや、特定エリアへの侵入検知など、多彩な機能を組み合わせることができます。
防犯センサーの導入
防犯センサーは、カメラでは検知しにくい動きや車両の状態をリアルタイムで把握するための設備です。センサーが反応すると管理者へアラートが届く仕組みを組み合わせることで、素早い対応が可能になります。人の動きを検知する「動き検知センサー」と、車両の状態を把握する「車両検知センサー」の2種類を適切に使い分けましょう。
動き検知センサー
動き検知センサー(人感センサー)は、駐車場内への人の侵入や不審な動きを検知します。センサーライトと連動させれば照明を自動点灯でき、警報システムと組み合わせれば即座にアラートを発報することも可能です。設置場所は、死角になりやすい隅や建物裏・フェンス沿いを優先しましょう。誤作動を防ぐため、検知感度は現地環境に合わせて細かく調整することが重要です。
車両検知センサー
車両検知センサーは、駐車している車両の動きや状態を監視するセンサーです。許可なく車両が動かされた場合や、タイヤ・部品に触れた場合に検知してアラートを発します。社用車の盗難防止や部品盗難対策として有効で、特に夜間無人となる駐車場では大きな抑止効果を発揮します。車両ごとに取り付けるタイプと、エリア全体をカバーするタイプがあります。
定期巡回・外部警備会社の活用
設備だけでは対応しきれないリスクをカバーするのが、警備員による定期巡回や外部警備会社との契約です。警備員が実際に駐車場を回ることで、カメラやセンサーでは気づけない異常を発見できます。また、警備会社と契約することで、センサーが反応した際に警備員が駆けつける「機械警備(駆けつけ対応)」サービスを利用することも可能です。費用はかかりますが、万が一の際の対応スピードが格段に上がります。警備会社への依頼を検討する際は、複数社から見積もりを取り、自社の駐車場規模や予算に合ったプランを選びましょう。
被害を未然に防ぐための運用ポイント

優れた設備を導入しても、適切に「運用」されなければ防犯効果は発揮されません。防犯対策は「導入して終わり」ではなく、継続的に点検・改善していくことが重要です。ここでは、日常の運用で押さえておくべき3つのポイントを解説します。
防犯対策チェックリストの作成
駐車場の防犯状態を定期的に確認するために、チェックリストを作成しましょう。「照明は正常に点灯しているか」「カメラの映像は正常に録画されているか」「ゲートの施錠は確実に行われているか」など、点検項目を一覧化しておくことで、確認漏れを防げます。チェックは担当者が週次・月次で行うことを習慣化し、記録を残しておくことで問題の早期発見にもつながります。
トラブル発生時の対応フロー整備
万が一被害が発生した場合に、誰が・何を・どの順番で対応するかを事前に決めておくことが重要です。例えば、「被害発見→上長へ報告→警察へ通報→保険会社へ連絡→証拠保全→社内共有」といった流れをフロー図にまとめておくと、パニックになりやすい緊急時でもスムーズに動けます。対応フローは全社員が閲覧できる場所に掲示・共有し、新入社員へも必ず周知しましょう。
防犯対策の見直しタイミング
防犯対策は一度構築したら終わりではなく、定期的に見直すことが必要です。見直しのタイミングとしては、「近隣で犯罪が発生したとき」「駐車場のレイアウトが変わったとき」「設備が老朽化したとき」「新しい防犯技術が普及したとき」などが挙げられます。年に1〜2回は全体を見渡した総点検を行い、現在の対策に抜け漏れがないかを確認する機会を設けることをおすすめします。
まとめ|会社の駐車場防犯は「設備+運用」で強化する

会社の駐車場の防犯対策は、照明整備やフェンス設置といった低コストの基本対策から始め、防犯カメラ・センサー・警備会社の活用による本格的な設備投資へと段階的に強化していくことが理想的です。
しかし、どれだけ優れた設備を整えても、日常の運用が伴わなければ意味がありません。チェックリストによる定期点検、トラブル発生時の対応フロー、そして定期的な見直しを組み合わせることで、「設備と運用の両輪」が機能します。
まずは今日から、自社の駐車場の現状を確認することから始めてみてください。小さな一歩の積み重ねが、社用車と社員を守る確かな防犯体制につながります。
