オフィスや事務所での防犯対策は、企業の資産を守り、従業員が安心して働ける環境を作るために欠かせない取り組みです。近年、企業を狙った盗難や不正侵入、情報漏えいなどの被害が増加しており、規模の大小に関わらずすべての会社が対策を講じる必要があります。
しかし「何から始めればいいかわからない」「予算をかけずに対策したい」という声も多く聞かれます。実は、防犯対策は高額な設備投資だけでなく、日々の運用ルールを見直すだけでも大きな効果が得られます。
本記事では、会社の防犯対策について、基本的な考え方から具体的な実践方法までわかりやすく解説します。0円でできる運用改善から、防犯カメラや入退室管理などの設備導入、内部不正対策まで、実務で使える内容をまとめました。オフィスの安全性を高め、安心して業務に集中できる環境を整えるために、ぜひご活用ください。
オフィスが狙われる理由と主なリスク

企業のオフィスが犯罪者に狙われる理由は、高価な資産が集中していること、そして管理体制に隙が生まれやすいことにあります。パソコンやタブレットなどの電子機器、現金、顧客情報を含む重要書類など、換金性や悪用価値の高いものが多く保管されています。また、夜間や休日は無人になることが多く、侵入のリスクが高まります。さらに、従業員による内部不正も見逃せないリスクです。ここでは、オフィスで実際に起きている被害や、狙われやすいオフィスの共通点について解説します。
よくある被害(盗難・不法侵入・内部不正)
オフィスで発生する主な被害は、「盗難」「不法侵入」「内部不正」の3つに分類されます。盗難では、ノートパソコンやタブレット、スマートフォン、現金、USBメモリなど、小型で高価な物品が狙われます。これらは転売しやすく、データも含まれているため二重の被害につながります。不法侵入は、夜間や休日に無施錠の窓や裏口から侵入し、金庫やロッカーをこじ開けるケースが多く見られます。防犯カメラがない、または死角が多いオフィスは特に危険です。「侵入盗(店舗・会社等)の防犯対策(愛知県警)」内部不正は、従業員や元従業員による情報持ち出し、横領、顧客データの不正利用などが該当します。信頼関係に基づく管理の甘さが、内部犯行を許す原因となっています。これらの被害は、金銭的損失だけでなく、企業の信用失墜や業務停止など、長期的な影響を及ぼす可能性があります。
狙われやすいオフィスの特徴(立地・死角・管理の甘さ)
犯罪者に狙われやすいオフィスには明確な共通点があります。まず「立地」では、人通りが少ない路地裏や、ビルの上階で人目につきにくい場所が危険です。駅から離れた場所や、夜間に周囲が暗くなるエリアも注意が必要です。次に「死角」の多さも大きな要因です。建物の裏側、非常口付近、駐車場など、外から見えにくい場所が多いと侵入リスクが高まります。窓の外に足場になるような物が置かれている場合も危険です。さらに「管理の甘さ」では、施錠ルールが徹底されていない、防犯カメラや警備がない、受付で来訪者の確認をしていない、従業員の入退室記録がないといった状況が狙われる理由になります。また、清掃業者や宅配業者など外部の人が自由に出入りできる環境も、リスクを高めます。自社のオフィスがこれらの特徴に当てはまらないか、まず確認することが防犯の第一歩です。
今すぐできる防犯対策【まずはここから】

防犯対策というと高額な設備投資をイメージするかもしれませんが、実は費用をかけずに今日から始められる対策が数多くあります。重要なのは「ルール」と「意識」です。日々の運用を見直し、全員が防犯意識を持つだけで、リスクは大幅に減らせます。ここでは、退社時のルール整備、オフィス環境の改善、盗難対策など、すぐに実践できる具体的な方法を紹介します。費用をかけずに効果を上げられる対策から始めることで、段階的にセキュリティレベルを高めていきましょう。
退社時・休日の基本ルール徹底(施錠・持ち出し管理・鍵管理)
退社時や休日の管理が甘いと、侵入や盗難のリスクが一気に高まります。まず全員で共有すべきは「施錠ルール」です。最後に退社する人が必ず全ての扉と窓を確認し、鍵をかける責任者を明確にしましょう。窓は特に見落としやすいため、階ごとにチェック担当を決めるのも有効です。次に「持ち出し管理」では、パソコンや書類、鍵などを社外に持ち出す際は必ず記録を残すルールを設けます。持ち出し簿を作成し、日付・氏名・持ち出し物・返却日を記入させることで、紛失時の追跡が可能になり、内部不正の抑止にもつながります。「鍵管理」については、鍵を個人に貸与し、他人への又貸しを禁止します。スペアキーは金庫に保管し、使用記録を残す運用にします。これらのルールは文書化し、全社員に周知することが大切です。守られていない場合は、定期的に確認し、改善を促しましょう。
「締め作業」チェックリストの作成
退社時の締め作業を属人化させず、誰でも同じレベルで実施できるようチェックリストを作成しましょう。リストには、「全扉・窓の施錠確認」「エアコン・照明の消灯」「金庫の施錠」「パソコンのシャットダウンまたはロック」「ゴミ箱の確認(機密書類が捨てられていないか)」「火気の始末」などの項目を含めます。このチェックリストは、入口やバックヤードなど、目につきやすい場所に掲示しておきます。実施した人は、日付と氏名を記入し、サインすることで責任の所在を明確にします。また、最終退社者は日替わり当番制にすることで、特定の人に負担が集中せず、全員が防犯意識を持つようになります。新入社員や異動してきた人にも、このチェックリストがあればすぐに対応できるため、教育の手間も省けます。シンプルで実行しやすい仕組みが、継続的な防犯対策につながります。
暗証番号・入館カードの管理ルール
オフィスの暗証番号や入館カードの管理が曖昧だと、容易に不正侵入を許してしまいます。まず「共有禁止」を徹底しましょう。入館カードは個人に貸与し、忘れた人に貸すことは厳禁です。どうしても一時的に必要な場合は、受付で記録を残し、その日のうちに返却させます。暗証番号も同様に、複数人で共有せず、定期的に変更します。変更頻度は最低でも半年に1回、または退職者が出た際には必ず変更しましょう。従業員が退職する際は、その日のうちに入館カードを回収し、システムから権限を削除します。マスターキーや管理者用カードは、金庫に保管し、使用記録を残す運用にします。こうしたルールを社内規定に明記し、違反者にはペナルティを設けることで、管理意識が高まります。カードを紛失した場合は速やかに報告させ、該当カードを無効化する手順も決めておきましょう。
オフィス環境の見直し(照明・視認性・死角対策)
物理的な設備がなくても、オフィスの環境を工夫するだけで、侵入者の心理的ハードルを上げることができます。犯罪者は人目につくことを最も嫌うため、「視認性」を高めることが有効です。オフィスの窓にブラインドをつけている場合、完全に閉めず適度に開けて中の様子が外から見えるようにすると、不審者が侵入しにくくなります。次に「照明」ですが、夜間も入口や駐車場、裏口周辺を明るく保つことで侵入を防げます。センサーライトを設置すれば、人が近づくと自動で点灯し、抑止効果が高まります。電気代が気になる場合は、LED照明を使うことでコストを抑えられます。さらに「死角対策」として、オフィス周辺の植栽や看板、荷物置き場などを整理し、見通しを良くしましょう。建物の裏側や非常口付近に物を置かない、窓の外に足場になるようなものを置かないといった工夫も重要です。これらは費用をかけずにできる対策で、防犯効果は絶大です。
盗難対象(現金・PC・書類)の保管ルール強化
オフィスで盗まれやすいものは、現金、パソコンやタブレット、機密書類です。これらの保管ルールを強化することで、被害を防げます。まず「現金」は必要最低限しか置かず、金庫に保管して鍵は責任者のみが管理します。日々の売上金などがある場合は、こまめに銀行に預けるようにしましょう。「パソコン」は退社時に必ずロッカーや施錠できる引き出しにしまい、机上に放置しないルールを徹底します。特にノートパソコンは持ち運びやすく狙われやすいため、ワイヤーロックの使用も検討します。デスクトップPCも、重要なデータが入っている場合は、ハードディスクを取り外して別途保管する方法もあります。「機密書類」は使用後すぐにキャビネットに戻し、廃棄時は必ずシュレッダーにかけます。コピー機の上や会議室のテーブルに置きっぱなしにしないよう注意喚起しましょう。これらの保管ルールを全社で共有し、習慣化することが盗難防止の基本です。
設備で強化するオフィス防犯

運用ルールだけでは限界がある場合、物理的な設備の導入が効果的です。防犯カメラ、センサー、入退室管理システムなどを適切に配置・運用することで、抑止・検知・記録の3つの機能を強化できます。ここでは、それぞれの設備の選び方や使い分け、失敗しないためのポイントを具体的に解説します。設備投資は一見コストがかかるように思えますが、一度被害を受けた場合の損失を考えれば、十分に費用対効果が見込めます。自社の規模や予算に応じて、優先順位をつけて段階的に導入していきましょう。
防犯カメラの導入ポイント(設置場所・運用方法)
防犯カメラを導入する際は、まず「目的」を明確にしましょう。犯罪の抑止が目的なのか、証拠の記録なのか、リアルタイム監視なのかによって、必要な機能や台数が変わります。次に「設置場所」ですが、入口、出口、金庫やサーバールーム付近、死角になりやすい場所を優先します。社内全体をカバーする必要はなく、重要なポイントに絞って配置する方が効果的です。カメラは正面だけでなく、斜めからも顔が映るように複数台設置することで、死角を減らせます。「運用方法」では、録画データの保存期間(通常1〜2週間)、誰が映像を確認するか、トラブル時の対応フローを事前に決めておきます。また、「防犯カメラ作動中」の掲示を行い、従業員にも周知することでプライバシーへの配慮と抑止効果を両立できます。カメラの存在を知らせることで、犯罪者が侵入を諦める心理的効果も期待できます。
抑止目的か証拠目的かを明確にする
防犯カメラには大きく分けて「抑止目的」と「証拠目的」の2つの使い方があります。抑止目的の場合は、カメラが設置されていることを明示し、「見られている」という心理的プレッシャーを与えることが重要です。この場合、比較的安価なカメラでも効果があり、ダミーカメラを併用する方法もあります。ただし、ダミーだけに頼るのは危険で、最低でも主要な出入口には本物のカメラを設置しましょう。一方、証拠目的の場合は、映像の鮮明さが重要になります。顔や行動がはっきり映る高解像度のカメラを選び、夜間でも撮影できる赤外線機能付きのものが望ましいです。録画データは最低でも1〜2週間保存し、トラブル発生時にすぐに確認できるようにします。自社の目的を明確にすることで、無駄のない投資ができます。両方の目的を兼ねる場合は、重要な場所には高性能カメラ、その他の場所には標準カメラというように使い分けるのも有効です。
屋内外での設置時の注意点
防犯カメラは設置場所を誤ると、期待した効果が得られません。屋内で最もよくある失敗は「逆光」です。窓を背にして設置すると、日中は人物が黒くつぶれて顔が映りません。窓に向けるのではなく、窓を背にする人物を映す向きで設置しましょう。また、カメラを高い位置に設置すると全体は映りますが、帽子で顔が隠れてしまいます。顔認識が必要な場合は、目線に近い高さも検討します。さらに、プライバシーへの配慮として、トイレや更衣室、休憩室などには設置しないようにします。屋外では、雨や直射日光に耐える防水・防塵性能(IP66以上推奨)が必須です。また、夜間の視認性を確保するため、赤外線機能付きのカメラを選びましょう。レンズに直接雨がかからないよう、庇や専用カバーを取り付けることも重要です。定期的にレンズの汚れを清掃し、映像がクリアな状態を保つメンテナンスも忘れずに行いましょう。
入退室管理と侵入検知の基本
入退室管理システムは、誰がいつどこに出入りしたかを記録し、権限のない人物の侵入を防ぐ仕組みです。ICカード、暗証番号、生体認証(指紋・顔)などの方式があり、それぞれ特徴が異なります。ICカードは導入コストが低く管理しやすいですが、紛失や貸し借りのリスクがあります。暗証番号は物理的なカードが不要ですが、番号が漏れると不正利用されやすいです。生体認証は本人しか使えず最も安全ですが、初期費用が高めです。侵入検知では、センサーや警報を組み合わせて、不審者が侵入した瞬間に知らせる仕組みを作ります。窓や扉に開閉センサーを設置し、営業時間外に開けられるとアラームが鳴る設定にすることで、犯行を諦めさせる効果があります。自社の規模や予算に応じて、最適な組み合わせを選びましょう。
ゾーニングで守るべきエリアを分ける
オフィス内すべてを同じレベルで管理する必要はありません。「ゾーニング」を行い、エリアごとに必要なセキュリティレベルを設定することで、効率的かつ効果的な管理が可能になります。例えば、「パブリックゾーン(受付・会議室)」は来客も入れる場所なので最低限の管理、「ワークゾーン(執務室)」は社員のみアクセス可能、「セキュアゾーン(サーバールーム・経理部門・役員室・金庫室)」は特定の権限者のみ入室可能、といった区分けです。このようにエリアを分けることで、守るべき場所を明確にし、限られた予算で重点的に対策できます。また、万が一侵入があっても、被害を特定のエリアに限定し、最小限に食い止められます。ゾーニングを図面に落とし込み、従業員にも周知することで、セキュリティ意識が高まります。
センサー・警報の効果的な使い方
侵入検知には主に3種類のセンサーがあります。「窓センサー」は、窓が開けられると反応する開閉センサーで、1階や低層階の窓に設置します。振動を検知するタイプもあり、窓ガラスが割られた際にも作動します。「扉センサー」は、ドアの開閉を検知し、営業時間外の不正な侵入を知らせます。非常口や裏口など、普段使わない扉に設置すると効果的です。「人感センサー」は、赤外線で人の動きを感知します。廊下や受付、倉庫など、無人であるべき時間帯に人が入った場合に反応します。これらを組み合わせて使うことで、多層的な防御が可能になります。センサーは警報装置と連動させ、異常時に音や光で知らせる設定にしましょう。また、誤作動を減らすため、営業時間中はセンサーをオフにし、退社後に自動でオンになるタイマー設定を活用します。感度調整も重要で、空調の風や小動物に反応しないよう調整することで、本当の異常時にのみ作動するようにできます。
内部不正・情報漏えいを防ぐ仕組みづくり

防犯対策は外部からの侵入だけでなく、社内で発生する不正やトラブルにも目を向ける必要があります。従業員による情報持ち出し、横領、機密データの不正利用などは、企業の信用を大きく損なう原因となります。内部不正は外部犯罪と異なり、正当な権限を持つ人物が行うため、発覚しにくく、被害が拡大しやすい特徴があります。ここでは、内部不正を未然に防ぐための権限管理、機密情報の取り扱いルール、従業員教育について解説します。「性善説」に頼らず、ルールと仕組みで牽制する体制が重要です。
権限管理とログ確認の徹底
内部不正を防ぐには、まず「権限管理」を適切に行うことが基本です。重要な業務は必ず複数人で担当し、一人が全てを完結できないようにします。例えば、現金の管理と記帳を別の人が行う、システムの権限変更は上司の承認を必須にするなどです。また、入退室管理システムやパソコンのアクセスログを記録し、「誰が・いつ・何を」したかを追跡できるようにします。「内部不正防止ガイドライン(IPA)」ログは定期的に確認し、不審なアクセスがないかチェックしましょう。特に、深夜や休日のアクセス、通常業務では必要ないファイルへのアクセスは要注意です。さらに、従業員が退職する際は、その日のうちにすべてのアクセス権限を削除し、返却物(カード、鍵、パソコンなど)を確実に回収します。権限の見直しは定期的に行い、不要な権限が残っていないか確認することも大切です。こうした仕組みにより、不正の機会を減らし、万が一発生した場合も早期発見できます。
機密文書・データの取り扱いルール
機密情報の漏えいは、紙の書類とデジタルデータの両方から発生します。まず「紙の書類」については、印刷時にプリンターの前で出力を待ち、放置しないようにします。保管は施錠できるキャビネットに入れ、机上に放置しないことが鉄則です。使用後はすぐに元の場所に戻し、廃棄時は必ずシュレッダーにかけます。ゴミ箱にそのまま捨てると、清掃業者や侵入者に見られるリスクがあります。「デジタルデータ」では、USBメモリへのコピーを制限し、私物のUSBメモリ使用を禁止します。重要なファイルにはパスワードをかけ、メール送信時は暗号化や送信先の再確認を徹底します。また、退社時には必ずパソコンをロックし、離席時も同様です。「クリアデスク」運用を習慣化し、退社時に机上に書類やメモを一切残さないルールも有効です。こうした日々の小さな積み重ねが、情報漏えいを防ぎます。
最低限行うべきセキュリティ教育
どれだけ設備やルールを整えても、従業員の意識が低ければ情報漏えいは防げません。しかし長時間の研修は負担が大きいため、短時間で効果的に伝えることが重要です。まず「フィッシング詐欺」への対策として、怪しいメールを見抜く5つのポイントを教育しましょう。「フィッシング対策(警察庁)」1)差出人のアドレスが不自然、2)件名が不安を煽る内容、3)本文に誤字や不自然な日本語、4)URLリンクのドメインが公式と異なる、5)添付ファイルが実行ファイル(.exeなど)。これらに当てはまるメールは開かず、すぐにIT担当者に報告させます。次に「事故が起きた時の初動」も教育が必要です。情報漏えいやウイルス感染が疑われる場合、すぐに上司とIT担当者に連絡し、自己判断で隠さないことを徹底します。該当端末をネットワークから切り離し、被害拡大を防ぐ対応も含めて、1枚のマニュアルにまとめて配布しましょう。定期的なリマインドで、意識を定着させることが大切です。
まとめ

会社の防犯対策は、外部からの侵入だけでなく、内部不正や情報漏えいなど、多角的なリスクに備える必要があります。本記事では、0円でできる運用ルールの見直しから、防犯カメラやセンサー、入退室管理といった物理的な設備、さらには従業員教育まで、実践的な対策を幅広く解説しました。
最も大切なのは、「完璧を目指さず、できることから始める」ことです。すべての対策を一度に導入する必要はありません。まずは施錠ルールの徹底や机上の整理整頓など、コストのかからない部分から取り組み、徐々に設備を充実させていくのが現実的です。
防犯対策は一度整えたら終わりではなく、定期的に見直し、改善を続けることが重要です。オフィスの安全を守ることは、従業員が安心して働ける環境を作り、企業の信用と資産を守ることにつながります。本記事を参考に、自社に合った防犯対策を実践し、安全で快適な職場環境を実現してください。
